春がやってくる

桜のつぼみが 膨らんできた。 春がやってくる。 春がやってくる。 やってくるのに母はいない。 今日の午後車を運転しながら 「春が来たでー。もうすぐさくら! 今年も桜の季節がきたなー! 一緒に桜をまた見られる。 これが 幸せっていうんやなー」 と、車い…

留学

英語は、学科ではない。 英語は、その言葉を母国語とする人同士が、共に語り、 怒り・喜び・発見を伝えるために使われる「言葉」だ。 その言葉を知っている事が、母の余命を変えた。 英語文献を漁り、手術方法からリハビリ、果ては アメリカのリハビリの治験…

何もしないという事

何もしないでいるという事が これ程大切なことだとは思わなかった。 母と共に生きていた頃、 日々、次にせねばならぬ事に頭が占められていた。 10;30には声をかけ起こし、 起きそうならばストレッチ、 その後、トイレに座らせ 着替えをし、ハンドウォシュレ…

自分の命は自分のもの。 そうなんだろうなと思う。 「自分のものだ」と言える場合は・・・。 自分のものだと言えない状況下にある場合 それでも心臓が動いている場合 それは自分のものではない。 まわりにいる者のものになる。 その「自分」を記憶の中に刻ん…

半年以上が過ぎた。 母不在の日常を、今日も生きた。 何かが欠落したままだけれど 何が欠落したのか、今もって 全く分からない。 仕事でもしてみるか。 そう思って、履歴書一通 送ってみる。 スカイプで面談を、と言ってきた。 一応少しばかりましな服を着て…

そしてアタシは、母のいない世界に放り出された。 6月30日6時32分、母が息を引き取り 12年半に及ぶ 母との共有時間(人はそれを「介護」というが アタシは介護した記憶はない)は終わった。 あれから一か月が過ぎた。 母のいない世界に生まれて、たった一か…